2020年7月1日水曜日

オンライン教育で公平性を担保する3つの方法


アメリカでは900万人以上の学生がネットにアクセスできない。また、オンライン学習を受けている生徒が半数以下の学校もある。こうした驚くべき数値は、学生の公平な学習環境に大きな格差があることを物語っている。


しかし、この不公平感を是正するにはネット環境やデバイスを確保するだけでは不十分だ。全国の75%近くの教育委員長が新学期(9月)には何らかのオンライン学習を始めることを計画している。このコロナ禍に対応した新計画では、初めから公平性が確保されなければ恵まれない生徒たちを十分に支援することはできない。


以下、公平な教育を念頭にオンライン学習を設計する3つの方法を紹介する。


1. 学校は保護者のためではなく保護者とともに計画せよ


学生にとって不可欠なニーズを満たすためにオンライン学習のような新しい手段を導入する場合、トップダウンの設計アプローチでは家庭にとって何が最も重要な要素なのかを学校側が見逃す危険性がある。しかし、インクルーシブな設計と共創を通じてオンライン学習やブレンディッド・ラーニングを設計することで、すべての家庭が質の高い初等中等教育を受ける基本的な権利を確実に充足することが可能だ。


生徒や家庭と協力してオンライン学習やブレンディッド・ラーニングを設計すれば、学校はこれまで以上に家庭の価値観や需要に見合ったより適切な成果をもたらすことができる。例えば、ブレンディッド・ラーニングのモデルでは、少人数や1対1での指導に最適化したり、教師が産業界や地域社会からゲストスピーカーを招くこともできる。しかし、こうした機会に飛びつく前に、家族と話して彼らが真っ先に解決したいと考えている問題は何かを理解すべきだ。 


2. 最も困難な状況にある生徒のために優先順位をつけよ


オンライン指導は、実際の教室で行われることを単に再現するものではない。オンライン学習やブレンディッド・ラーニングは、生徒一人ひとりのニーズや要求を充足するため柔軟に対処できるので、学習の方法やペース、どこで誰と学ぶかについて学生自身が有意義な決定を下すことができる。また教師にとっても、オンラインリソースを活用すれば指導計画や成績評価に伴う負担を軽減でき、個別指導や生徒との個人的な接触が最も必要とされる分野に集中することが可能になる。


こうした利点はあらゆる学生に恩恵をもたらすが、公平性を重視する教育者としては、最も困難な状況にある学生を支援するためにブレンディッド・ラーニングを設計するべきだ。例えば、エンリッチド・バーチャル・モデルでは、中心的な授業はオンラインで実施する一方で、少人数グループでの共同作業やアカデミック・コーチング、課外活動など価値ある学習体験のために貴重な直接指導の時間を確保している。このモデルでは対面指導は本質的な体験ではなく追加的な恩恵であるため、学校は1対1の時間をどのように配分するか公平性に重点を置いて決定することができる。家庭での責任が重い生徒やトラウマで苦しんでいる生徒には、学業面や社会面における対面での支援を一般生徒より多く確保することを検討すべきだ。 


3. 最も脆弱な生徒を中心にあらゆる支援を統合すべき


若者が成長するためには人間関係が重要であることは常識だと思うかもしれないが、この点が特に経済的に恵まれない地域出身の学生にとっては最も切実であることがコロナ禍により顕在化した。ソーシャル・ディスタンスのおかげで、学生たちが前進するために必要な社会的な拠り所を破壊する可能性がある。


オンライン学習の期間中に学生が友達やメンター、コーチ、その他関わりのある大人との関係を維持し続けるには、人間関係を念頭に置いた制度が意図的に設計されなければならない。生徒の家庭や地域社会における関係性をマッピングすれば、そうした関係性を活用して特にオンライン学習中の学生たちを確実に支援できるようになる。学生が誰を知っているのか、そしてそうした人間関係がどのような支援をできるのか、より良いデータを収集することは学習環境の継続的な変化から必然的に生じる不確実性を乗り切るには非常に重要である。


公平性を重要な設計要素としなければ、オンライン学習やブレンディッド・ラーニングはすでに顕著に現れている教育機会の格差をさらに拡大するだけかもしれない。公平性を学校再開計画の支柱とすることで、教育者は新学期に向けてより励みになる話ができるはずだ。


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