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"Is K-12 blended learning disruptive?" 
ブレンディッド・ラーニングは破壊的イノベーションか?
(Clayton Christensen Institute 2013年5月発表の資料より)  

持続的イノベーションと破壊的イノベーション
イノベーションには持続的イノベーションと破壊的イノベーションの2種類あり、それぞれ異なる軌跡をたどり異なる結果を生む。持続的イノベーションにより、 業界最大手はより良い製品やサービスを生むことができ、それを優良顧客に提供することで利益を増加させる。ここでは、市場で伝統的に正しいとされる方法に 従って既存顧客に製品・サービスが提供される。破壊的イノベーションが善で、持続的イノベーションが悪と誤解されることが多いが、その考えは正しくない。業績好調な業界では持続的イノベーションは不可欠である。なぜなら、企業は最優良顧客により良い製品・サービスを提供するよう努めるからである。

ハイブリッド理論
産業界では、破壊的イノベーションへの途上で新しく破壊的な技術と相対的に古い技術を組み合わせたハイブリッドの段階を経ることがある。例えば、自動車業界では、ガソリンエンジンから代替電力源へと移行する途上でハイブリッド車を開発した。大手企業は、ガソリンと代替電源両方の長所を活かすために、持続的イノベーションでガソリンと電力を使うハイブリッド車を開発した。
その他の業界、掘削機械、蒸気船、写真撮影、小売、銀行など、いずれも破壊的イノベーションに至る途上でハイブリッドの段階を経験している。
産業界がハイブリッド製品を作る理由は理解できる。業界最大手にとって全くの破壊的イノベーションは初期段階ではビジネス合理性がない一方、持続的イノベーションとしてハイブリッド製品を提供することで優良顧客を満足させることが可能なのである。

ハイブリッドの特徴
ハイブリッドのイノベーションには以下4つの特徴がある。

①ハイブリッドには新旧両方の技術が含まれる。一方、完全に破壊的なイノベーションは旧式の技術を完全な形では提供しない。
②ハイブリッドは見込み客より既存顧客をターゲットとする。見込み客への新技術を使った代替手段は全く存在しない。
③ ハイブリッドは従来技術で仕事をしようとする。その結果、既存顧客を満足させるハードルはかなり高い。なぜならハイブリッドは、元々の基準で少なくとも従来製品と同等以上のパフォーマンスを示さなければならないからである。対照的に、破壊的イノベーションに成功する企業は一般的に新技術を使う能力を備え、新製品を受け入れる市場を見つける。
④ハイブリッドは破壊的イノベーションより「簡単・確実」である傾向が弱く、ハイブリッド製品を購入する資産および操作する専門知識を大きく損ねることはない。

重要な点は、非消費市場が残っていない場合、ハイブリッド製品は従来の基準では旧技術より劣るとされる新技術の唯一の現実的な選択肢である。つまり、完全な消費市場においては、破壊的イノベーションよりハイブリッドが市場を支配する傾向がある。

ハイブリッド型 Blended Learning
学校現場では、伝統的な教室については持続的イノベーションを取り入れているハイブリッド型のBlended Learningが拡がり始めている。ハイブリッドは両方の長所、すなわちオンライン学習の利点と伝統的な教室の利点すべてを組み合わせた形式である。
これとは対照的に、Blended Learningの他のモデルは、伝統的な教室についても破壊的イノベーションを取り入れているようである。この場合には、伝統的な教室を完全な形では取り入れていない。 非消費市場から導入し始め、新しい価値観に合致する利点を提供する。相対的に購入と操作がより安全・確実になる傾向がある。
Blended Learningを分類すると、クラス内移動モデル、教室移動モデル、反転授業が持続的イノベーションを取り入れたハイブリッド型である。これらのモデルでは、伝統的な教室とオンライン学習の両方の主な機能が組み込まれている。対照的に、フレックス、アラカルト、Enriched Virtual (遠隔授業)、そして個別移動の各モデルは、従来のシステムより破壊的イノベーションを多く取り入れて発展している。

Blended Learning の未来
ハイブリッドのBlended Learningモデルは、伝統的な教室については持続的イノベーションの道をとる。これらのモデルは、集団一斉授業を基礎とし、その機能を維持・強化するが、破壊しない。一方、より破壊的モデルは、教室の姿を転換し、特に中学・高校において長期的な変化の原動力となる。ハイブリッド型のBlended Learning は、完全な破壊的イノベーションが十分になれば頓挫する可能性が高い。
こうなると、従来型の学校の基本的な役割は大きく変化する。生徒が通学したくなるような、例えば素晴らしい対面指導や高品質な食事、スポーツ、音楽、美術関連のプログラムを実施するための整備された施設を提供することに専念し、指導にネットを活用するようになる。
従来型の教室やハイブリッド型のイノベーションはいずれ破壊的Blended Learning に発展するだろうが、従来型の学校が今すぐ完全になくなることはない。その理由は、アメリカの特に中学・高校では、非消費市場が教室レベルでは多く残っているが、学校レベルではほとんど存在しないためである。ほぼ全ての子供が何らかの公立学校へ通学することが可能である。
将来、従来型の学校に新しい教室モデルを組み合わせたハイブリッド型がアメリカでは学校教育の主流になるだろうと予測している。長期的には、アメリカの中学・高校においては破壊的イノベーションのBlended Learning モデルが従来型の教室を席巻していくだろう。
フレックス、アラカルト、Enriched Virtual (遠隔授業)、そして個別移動など破壊的イノベーションのBlended Learning モデルが長期的には中学・高校において教室の姿を大きく変える原動力になるだろう。しかし、小学校ではそうなる可能性は低い。

教育指導者への提言
教育指導者は、破壊的イノベーションの眼を通して自らの努力の効果を予測することができる。従来のモデルを維持する戦略は、今後数年間は学生にとってメリットがある。この戦略は、学校の予算や設備に手が出せないほとんどの担任教師、学校のリーダー、そして今日ほとんどの生徒が公教育を受ける場である教室を改善したい人に最も適している。より破壊的なBlended Learningモデルの展開を加速する戦略は、教室の姿を生徒中心のモデルに転換するうえで大きな影響力持つ。これは、学校の予算や設備に関して権限を持つ校長(特にチャータースクール)には現実的な方法である。
さらに、オンラインコース契約の権限を持つ学区長、州の政策責任者、慈善家、起業家などは破壊的イノベーションを強化する役割を果たすべき立場にある。
教育指導が破壊的イノベーションを推進するには次の5つの段階を含む。

①従来型の教室活動からは完全に独立したチームを学校内に結成する
②最初は、非消費市場に集中してBlended Learning を導入する
③非消費市場から対象範囲を拡大する際には、相対的に高い学力の生徒を対象にする
④導入プロジェクトを保護することを約束する
⑤改革しやすい方針を推進する

長期的には、破壊的イノベーションのBlended Learning モデルは中学・高校において大多数の生徒を既存の制度から移行させるに十分に発展する。生徒のメリットは、個別化、ユニバーサルアクセス(誰でも何時でも何処でも)と公平性、生産性に焦点を当てた新たな利点(または価値提案)である。時間とともに破壊的イノベーションのBlended Learning モデルが発展していくと、新しい価値提案は伝統的な教室を十分に凌駕する。

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