"Blended Learning" 概要

ブレンディッド・ラーニングとは、一言でいえば「従来の対面式集団講義授業にオンライン学習を組み込んだ教育法」です。コースの少なくとも一部がオンライン学習から成り、生徒自身が学習の時間、場所、方法またはペースを管理する正式な教育プログラムで、オンライン学習の内容は、カリキュラム全体の一部として機能するよう統合されています。


従来の「皆が同じ教科書を使って、同じ時間割に従って、同じ授業を受ける」受動型集団一斉授業の一部にeラーニングを取り入れた授業レベルでの改善ではなく、学校全体で生徒一人ひとりに合わせた個別カリキュラムで生徒が主体的に学習を進めるモデルへと構造的に変革するための手段です。クラス全員が 同じ教材を同じペースで勉強する集団授業の一部としてeラーニングが取り入れられているケースは、ブレンディッド・ラーニングとは言えません。

オンライン学習を取り入れるのは、子どもたち一人ひとりの多様性に基づいた個別カリキュラムを実現するためです。今世紀に入ってからのICTの急速な発展により、これまでは不可能であった学習の個別化が可能になりました。そのうえで、その個別カリキュラムに沿って、子どもたちが主体的に学習を進めることがポイントです。こうした「個別カリキュラム✖学習者主導」の結果、毎年4月に学年全員が同時に進級するのではなく、一人ひとりの理解度、到達度によって進級時期が決まるのです。

ブレンディッド・ラーニングは、導入されている学校、科目、学年などにより非常に多くのパターンが見られますが、大きく分けて以下6つのモデルに分類することができます。

①ステーション・ローテーション
クラスを10~15人程度ずつ3つのグループに分け、生徒たちは時間割や先生の指示に従って教室内の複数の学習コーナーを移動します。そのうち少なくとも1ヶ所はオンラインでの個別学習で、その他に少人数指導や全体講義、グループ学習、個別指導、演習問題などが行われます。クラス全体で移動しながらそれぞれの活動に取り組むケースもあれば、クラスをいくつかの小グループに分けて移動するケースもあります。3つのグループが同時に進行し、オンライン学習の生徒は自律的に学習を進めるため、先生は他の2つのグループに集中することができます。これによって通常の集団授業に個別指導の要素を取り入れた指導が可能になります。
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②ラボ・ローテーション

ステーションローテーションが一つの教室内で完結するのに対し、ラボローテーションでは生徒が時間割や先生の指示に従って校舎内の複数教室を移動します。対面式の少人数指導は普通教室で行い、タブレットやPCを使ったオンライン個別学習はコンピューター室へ移動し、プロジェクト学習の時間は小部屋に集まるといった具合です。コンピューター室でのオンライン学習は必ずしも正式教員が常時見守る必要はありません。3か所で別々の教員と接することは、教師との信頼関係を築くうえで一長一短あります。別々の場所での学習結果を有機的に統合して管理し、個別生徒の指導に活かせるようシステムを作ることが重要です。
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③反転授業
簡単に言えば、「学校で基礎学習⇒自宅で宿題自習」という伝統的な教育法とは正反対に、生徒は「自宅へ配信されるビデオを視聴して単元要点を予習し、学校では課題学習または協働学習」する教育法で、すでにアメリカなど欧米先進国では広く導入されています。単元要点をオンラインで学習するため、生徒自身が学習場所や学習ペースを自分で選択することができます。単に夜自宅でネットを使って宿題をすることとは区別されます。日本でもここ数年で導入され始めました。従来の教育に対する固定観念を180度転換するという意味で注目を集めていますが、課題がないわけではありません。まず家庭での予習が前提になっているため、子供が主体的に勉強しなけれ意味がありません。また、一つのクラスには予習の理解度が生徒により異なるため、従来型の集団授業形式では教育効果に限界があることは否めません。


④フレックス
生徒は個別の時間割にそって学校内外の複数個所を移動して主にオンライン学習に取り組みます。クラスの時間割がきっちりと決められているローテーション・モデルとは対照的に、生徒一人ひとりのニーズに応じて少人数指導やグループ活動、個別指導などを柔軟に組み合わせて学習計画が編成されます。オンライン学習を補完するための対面指導が毎日ある場合もあれば、オフラインの指導は非常に限られている場合もあります。関与の度合いは学校により異なりますが、担任教師は教室に常駐し、生徒の必要に応じてサポートを提供します。


⑤アラカルト
生徒は通常の時間割では対応できない授業を補完する形でオンラインコースを利用します。例えば、スペイン語を勉強したい生徒がいるものの、外国語は英語のみといった場合に、スペイン語の授業のみをオンラインで学習するといった具合です。オンライン学習そのものに対面指導は一切ありませんが、アラカルトとは異なり、フレックスでは対面指導の先生が担任を務めます。オンラインコースを受講する場所は、学校でもその他の場所でも構いません。このモデルは、授業の全てをオンラインで受講するのではない点において、完全なオンライン学習や通信教育(Enriched Virtual)とは異なります。

⑥通信教育(Enriched Virtual)
生徒は、キャンパスでの授業と要点解説のオンライン配信による遠隔学習とを組み合わせます。最初はオンライン学習のみで開始し、後からキャンパスでの授業を導入するケースも多く見られます。反転授業と異なる点は、全体的にオンライン学習が中心となり、平日にキャンパスで授業に出席することは非常に限られていることです。

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01) ブレンディッド・ラーニングは破壊的イノベーションか?(2013年5月発表の資料より)

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