2020年5月31日日曜日

学校再開時に利用できるブレンディッドラーニング

The learning models that can help schools reopen

アメリカの学校では秋の新学期に向けて様々な想定をするが、不確定な要素が多い。学校が閉鎖されたままであれば、より多くの遠隔学習を準備する必要がある。一方、学校が再開できれば、ソーシャルディタンスを保つために分散登校をする必要がある。
時間を短縮して生徒たちを登校させることが可能ならば、ゼロからまったく新しい方策を考え出す必要はない。ブレンデッド・ラーニングの2つのモデル、エンリッチド・バーチャルと反転授業はこうした状況に適応可能だ。ただし、いずれもネットへの接続が不可欠であることに注意がいる。

エンリッチド・バーチャル・モデルでは、生徒は自宅や学校外においてオンラインで授業の大半を履修するが、週に数回、教師との対面授業に出席するため登校する。反転授業では、生徒は自宅でオンライン授業やビデオ講義で学習し、学校では教師が指導する演習やプロジェクトに参加する。

通常、反転授業は毎日学校へ通う生徒が対象になるのに対し、エンリッチド・バーチャルでは、普段は学校へ行かない生徒の支援を強化するために導入されるのが一般的だ。しかし、コロナ禍で一度に登校する生徒数を減らす必要がある場合には、2つのモデルの区別はやや曖昧になる。本稿では、これら2つのモデルがどのように利用されているのか、実例を紹介する。

自立したオンライン学習と対面授業の組み合わせ

ノースカロライナ州の高校で歴史を担当しているスコット・ノルト先生は、対面指導を毎日せずに教える方法として何年もブレンディッドラーニングを利用してきた。彼が最初にブレンデッドラーニングを導入した学校では、生徒の約半数が毎日授業を受け、残りの半数は自宅で自主的に学習していた。現在の学校では、生徒はコロナ禍により休校になるまでは毎日教室でノルト先生と一緒に過ごしていたが、先生は自習室形式で少人数グループを指導し、その間その他の生徒たちは自習していた。このような授業方法だったため、休校になっても問題なく遠隔学習に移行することができた。

オンライン学習では、コース内容の基本的な理解を深めるために教科書を勉強したりビデオを視聴して評価を受け、新しい単元に進んでいく。その後、個別の課題やグループディスカッションを通じて分析力や批判的思考力を養っている。オンラインで学習している間は、生徒はメッセージ機能や、課題やディスカッションに組み込まれたコメント機能を使って先生とコミュニケーションを取り、先生はフィードバックを返している。

ブレンデッド・ラーニングは、生徒一人ひとりの興味に応じて異なる理解の深さで探求することを可能にする。すべての生徒は、各章または単元の要点を理解することが期待されるが、それ以上は自分の興味のあるトピックを深く掘り下げる選択をすることが可能だ。最後には、小論文やプレゼンテーション、その他の課題を通して、コースの概念を習得していることを示す。

人間関係を強化するためにブレンデッドラーニングを活用する

ワシントンDCの高校で数学を教えているステイシー・ローシャン先生は、数学への愛を生徒と共有し、「数学が得意でない」という観念と闘う手助けをしたいと考えて教師になった。先生は自分のクラスを、数学を探求することが楽しく、生徒一人ひとりを大切にする場所にしたいと考えていた。しかし、答えのわからない宿題と毎晩格闘し、オールAの成績を取らなければならないという大きなプレッシャーで、発展微積分クラスの生徒の多くは数学を好きになれないでいた。先生は先生で、教室では毎晩の宿題をすべて解決することに忙殺されて、生徒のニーズをじっくり聞いている余裕がほとんどないことに気付いた。

こうした問題に対処するため、先生はブレンディッドラーニングに注目した。授業をオンラインのビデオに「反転」させて、生徒が自宅で視聴できるようにしたのだ。そうして、教室では生徒の質問や誤解に応えたり、数学の概念を話し合ったり探求したりと、より個人的な方法で生徒と接するように授業時間をシフトした。

ローシャン先生は著書『Tech with Heart』の中で説明している。「私の反転授業は、家でビデオを見たり、授業で教科書の課題をこなしたりすることを意味するものではないことを理解することが重要です。生徒の不安を和らげるようクラスメートや私と一緒に問題に取り組む時間を作っているのです。学習空間を個別化し、生徒と関係を築き信頼を得て、生徒が私を最も必要としているときにそばでサポートするのです。」

これらのブレンディッドラーニングモデルを新学期に実践する

小学校ではほとんど毎日登校し宿題も比較的少ないことから、クリステンセン研究所が調査してきた反転授業やエンリッチド・バーチャル・モデルのほとんどは高校である。しかし、コロナ禍によりすべての生徒が少なくとも学習の一部は自宅ですることを求められることを考えると、こうしたモデルは小学校でも検討するに価する。どちらのモデルも、ソーシャルディスタンスを保つために分散登校する生徒にとっての制約や機会に対応して先生が上手く授業を設計するための青写真を提供している。

上記のようなブレンデッド・ラニング・モデルについて詳しく知りたい方は、クリステンセン研究所のHPでブレンデッド・ラーニング・ユニバースを調べたり、カーン・アカデミーで利用できるブレンデッド・ラーニングの講座を閲覧すること推奨する。またこのようなモデルの設定方法を学びたい方には、手始めとしてModern Classrooms Projectが素晴らしいPDを提供している。

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