2019年11月6日水曜日

ブレンディッドラーニングが直面する障壁

"One Major Barrier to High-Quality Blended Learning"

今日、ブレンディッドラーニングはもはや目新しいものではありません。 しかし、10年以上にわたる着実な導入と改善を経ても、初等・中等教育の標準となるような有効性、信頼性、使いやすさのレベルには達していません。

まず喜ぶべき点は、クリステンセン研究所が初めてブレンディッドラーニングについての報告書を出した2010年以来、ブレンディッドラーニングを採用して実践を繰り返し、有効なものを体系化して戦略を共有する学校が右肩上がりで増えていることです。NGLC、Highlander Institute、Seton Education Partners、Education Elements、Transcend、Summit Learning、The Learning Acceleratorといった教育機関はすべてブレンディッドラーニングの普及推進に重要な役割を果たしてきました。そうした学校組織の発展とともに
、ブレンディッドラーニングをサポートするデバイス、ソフト、オンライン学習などのリソースも徐々に改善されています。開発の過程では、学習者をより引き付け、学生の個々の学習ニーズに対応するためにブレンディッドラーニングを使用している多くの刺激的な教育者にも出会いました。

しかし現実を率直に話せば、いまだブレンディッドラーニングは学習成果を保証する万能な戦略にはなっていません。 ブレンディッドラーニングを採用している学校の中には顕著な成果を上げているところもありますが、そうでない学校も数多く存在します。ブレンディッドラーニングを使って個別学習を実践している学校に関する最近の調査では、わずかな改善が見られたのは読解と数学のみで、統計的に有意なのは数学だけでした。教師にとってテクノロジーがうまく機能しない分野も見受けられます。たとえば、教師の多くがブレンディッドラーニングのさまざまなモデルを提供するプラットフォームの管理に苦戦しています。さらに、利用可能なオンライン学習リソースが、自校の教育方針や学習目標、スケジュール、ペース調整、または成績評価ポリシーと完全には一致していないことがよくあります。

要するに、革新的な教育者と技術者には、学習ツールと実践をより信頼性が高く使いやすいものにするためにまだやるべきことが多くあります。当面は、ブレンディッドラーニングは教育的ベストプラクティスの世界ではニッチな扱いのままでしょう。

高品質のブレンディッドラーニングに対する障壁を克服するには

それでは、ブレンディッドラーニングをより効果的で信頼性が高く、使いやすいものにするにはどうしたらよいのでしょうか? モジュラリティ理論によれば、システムのパフォーマンスを改善する最も効果的な方法は、パフォーマンスに影響を与えるすべての要素を一元的に「統合」する組織を作ることです。ブレンディッドラーニングにおいては、教育者と技術者が手を携えて、テクノロジーから学校方針、教育実践までを共同で設計する組織を作ることを意味します。

共同設計の重要性をより明確に示すため、コンピューター業界における類似の事例を思い出してください。今日では、アップルがiPadでまったく新しい製品カテゴリを確立したことは誰もが知っています。その一方で、マイクロソフトがアップルに先駆けて約20年もの間、Windowsベースのタブレットを発売しようとして上手くいかなかったことはあまり知られていません。

マイクロソフトの大きなミスの1つは、Windowsオペレーティングシステムをタブレット用に微調整しただけで、あとはPCメーカーにハードの生産を任せてしまったことです。ハードとオペレーティングシステムが別組織で構築されたため、残念ながら、オペレーティングシステム、処理能力、バッテリー容量、物理的寸法、タッチインターフェース間の相互依存関係を誰も一元的に統括できませんでした。その代わりに、最初に一般的な仕様に同意してから、それぞれの組織で部品を生産する必要がありました。その結果、タブレットの重量は大きく、バッテリーの寿命は短くなり、タッチデバイスとしては使いにくい製品しかできませんでした。

対照的に、アップルによるiPadの成功は、性能がまだ十分でない時点での統合戦略の重要性を示しています。iPadの主要部品をすべて社内で設計することで、すべての部品をどのように組み合わせればタブレットを最高のパフォーマンスにするか何度も考え直すことができたのです。iPadの成功は論より証拠です。

アップルの経験から得られる教訓は、初等・中等教育機関においてもテクノロジーの設計から学校方針、教育実践をすべて統合して始めて、ブレンディッドラーニングのパフォーマンスが発揮できるということです。たとえば、学校独自の評定基準や指導方針から学習目標の定義および測定方法に沿った学習達成度の追跡手段を備えていれば、達成度基準の指導はより円滑に機能するのです。同様に、オンライン学習リソースは、その学校独自の校風や指導戦略に合致している場合により効果が出るのです。

しかしブレンディッドラーニングが直面する課題は、初等・中等教育機関では、学習の主要な要素を一元的に統合する組織を作ることは難しいという現実です。州政府は、テクノロジー開発のために多額の予算を教育機関に与えることはありません。ベンチャーキャピタルも、通常は教育機関のネットワーク構築と運用を目的とするエドテック新興企業には投資しません。このことは、残念ながらブレンディッドラーニングは重たくて使い物にならないWindowsタブレットによく似た世界に留まらざるを得ないことを示しています。

0 件のコメント:

コメントを投稿