1997年に米国西部19州の知事により設立された Western Governors University (WGU) はオンライン専業の大学で、受講学生数はこの10年で倍増し現在は10万人に達し、これまでの卒業生数も10万を超えた。
学生の満足度、定着率、卒業率などが示す通り、着実にプログラムの質を向上させてきた。WGUがどのように新しいアプローチを導入し、新しいテクノロジーを活用し新しいビジネスモデルを実現して教育界における「破壊的イノベーション」と評されるに至ったのか、以下考察したい。
1)学生構成
地方農村部に住み大学進学の機会に恵まれない労働者に対して手軽に高等教育を受ける方策を提供している。実際、WGU生の平均年齢は37歳で、74%がフルタイムで働き、40%が初めて高等教育を受ける。
2)差別化
一般の大学とは異なり、講義はすべてオンラインで配信され、伝統的なキャンパスや学生生活は経験できない。しかしながら、勤労学生が必要とするサポートを提供することが最重視され、教育機関としての学術的名声を追い求めない。WGUでは研究に対する支出は極力抑え、コーチングやメンタリングといった勤労学生を直接支援する仕組みに予算が重点配分されている。多くの伝統的な大学が教育機関としての名声を維持するため、財政能力が高く優秀な成績の学生を集めることを余儀なくされ、教員も指導力ではなく研究力に基づいて採用されている。
3)習熟度ベース
授業はすべてオンライン配信なので、学生は各自の都合に合わせて学習の時間と場所を選択でき、理解度に適したペースに自己調節することができる。WGUのマスコットはフクロウだが、学生の大多数が昼間は働き、夜間に学習していることを表す。多くの学校がWGUのような習熟度ベースを検討しているが、実際に導入しているのは少数にとどまっている。
4)オンライン配信
メリットはコストの削減だけではなく、蓄積されたデータに基づいて新しい教材をテストしカリキュラムの改善に役立てることが可能。例えば、ソフトスキルが長期的な学術上および職業上の成功と相関関係にあるという洞察に基づき、リーダーシップ、自己管理、モチベーションに関するカリキュラムを医療専門学生の一部に導入した。対象学生の授業参加率および継続率が大幅に向上したことからコースを拡充し、これまでに1万人以上の学生が受講した。
5)授業料
従来の大学では受講単位数に乗じて授業料が決まるが、WGUでは6ヶ月の学期ごとに一定額を支払うシステムとなっている。各学期中に最低12単位の授業を修了する必要があるが、単位数に上限はない。平均すると5学期で学士課程を修了しているので、他大学と比較して授業料は格段に低く抑えられる。実際、WGUの授業料は年間6500ドル程度に抑えられ、卒業生のローン残高は全国平均の半分以下にまで減少した。
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