この10年間で、教育界では「破壊的イノベーション」という用語は特別ではなくなった。Edtech起業家や学校自由選択支持者にとっては、荒廃した教育制度を変革するエンジンとして、その対極にある人々にとっては、教育の民営化を正当化するための誤ったレトリックとして。教育の「破壊的イノベーション」とは一体何なのか。
2008年発売のHBSクリステンセン教授による著書「Dirupting Class」で破壊的イノベーション理論によりオンライン学習が初等中等教育を変革すると言われて以来、オンラインスクールは増え続け、オンライン学習を多用するチャータースクールが注目を集めている。だが、Disrupting Classは「学校」が破壊されると予想したのではない。
まず、破壊的イノベーションはメジャーな選択肢にアクセスできない人々にサービスを提供することから始まるが、誰もが何らかの公教育にアクセスできる今日のアメリカでは、チャータースクールは公立学校と直接競合するので破壊的イノベーションとはいえない。次に、破壊的イノベーションには時間の経過とともに顧客が従来型サービスと同等と見なすテクノロジーが必要だが、共働き家庭が重視する学校の役割をすべてテクノロジーが代替することはできないので、フルタイムのオンラインスクールに需要があるのはごく一部の人々にすぎない。
Disrupting Classが指摘したのは、オンライン学習が初等中等教育の既存市場において破壊的な革新を起こすことであり、教育制度全体を破壊することではない。実際、アダプティブ学習のソフトから習熟度ベースの学習管理システムや完全なオンライン学習講座まで、あらゆる種類のオンライン学習業者が登場して教育学区に販売し始めたため、教科者出版会社が脅かされる結果となった。
学習者中心の教育を実現するテクノロジーは自動的でも直感的でもない。つまり、革新的なオンライン学習技術の多くは伝統的な学校と互換性がないため、実際にはなかなか採用が進まない。また、学習の個別化を進めるうえで学校の伝統的な人員配置モデルを再検討する必要があるが、教員の役割と責任を再定義することは容易ではない。結局、オンライン学習は様々な新しい機会をもたらすが、学校改革の実務はチェンジマネジメントに頼らざるを得ない。
教育の破壊的イノベーションは進んでいるが、伝統的な学校そのものを置き換えるのではなく、学校が提供する教材の種類を変える。こうした新しい教材を上手く活用するには、教員への影響を慎重に考慮し、教員が指導方法を変える動機となるように新しいツールやプログラム、アプローチを実践していく必要がある。
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