ここ最近、個別学習の定義が不明確だと批判する記事をたびたび見かける。個別学習は学生の社会的精神面の発達を阻害するテクノロジーを使用している、または個別学習とはシリコンバレーの大企業による独占だと主張している。大規模に展開する場合を除けばテクノロジーは必ずしも個別学習の絶対条件ではないことなど、細かい点まで理解するには、個別学習とは何かを定義し、しばしば同義語のように扱われるブレンディッドラーニングとは何が異なるのかを正しく理解することが重要だ。
クリステンセン研究所は、「個別学習」の定義を個々の学生に合わせて学びと発達を調整する一連の努力とモデルとする教育学上の理念だとしているが、学生に望まれる成果とその指導方法とを一緒くたにすることに定義が不明瞭になる一因があるのではないか。
スタンフォード大学のラリー・クーバン教授がカリフォルニアの高校を調査した結果、個別学習は一連の学習目標とその指導方法を示すスぺクラムのどこかに位置している。スペクトラムの一方の極には、既存の学習体験と目標達成に特化した行動結果に従って多様な考えを一つにまとめる個別学習があり、反対側の極には「単なる知的で学術的な成果を超え」た学生の主体性を育むよう固定された学習目標または学習方法から逸脱して学生自身に学習を自由に構築させる個別学習がある。
「ブレンディッドラーニング」とは、クリステンセン研究所の定義によれば、正式な教育プログラムであり、
・少なくとも学習の一部はオンラインで実施され、学生が学習の時間、場所、方法またはペースについてコントロールする
・少なくとも学習の一部は自宅以外の監督付き教室で実施されている
・かつ、コースまたは科目内における各学生の学習方法は、統合された学習経験を提供するために相互に関連付けられている
言い換えれば、ブレンディッドラーニングは、教科書、講義またはプロジェクトと同様の学習方法から成り、特定の哲学や教育学に限定されない。ブレンディッドラーニングには、オンラインと対面授業の両方の要素があり、一つのクラスの生徒数と同じくらい多様な場合もあれば、伝統的なクラスのように一つにまとめられている場合もある。ブレンディッドラーニングではごく単純なドリル演習から複雑なプロジェクトや探求型学習まで、あらゆる種類の学習体験がオンラインまたは対面式の学習として組み込むことが可能である。
学校またはクラスをブレンディッドラーニングと分類する基準は、授業内容ではなく、ましてや指導または学習方法でもなく、学生による学習コンテントへの接触方法である。学習の一部でもオンラインであればブレンディッドラーニングと分類される。とはいえ、実際にはブレンディッドラーニングは特定の哲学的または教育学的特性に固定されているように見える。たとえば、非常に多くのブレンディッドラーニング型授業において決められたコンテンツと基本スキルを習得できるよう各学生に適したレベルの問題を出題する市販のオンライン教材が使用されている。
このため、ブレンディッドラーニングは学生が学習内容をゼロから構築できる個別学習と相反すると嘆く人もいるが、こうした見方は近視眼的だ。学校現場で支持を得ている特定のエドテックツールと、エドテックツールそのものが進化するように進化する方法論としてのブレンディッドラーニングとを同一視している。
要約すると、ブレンディッドラーニングは教材を配信するためにテクノロジーを統合した指導方法にすぎず、何か特定の教育目的や哲学を暗示するものではない。一方、個別学習はより幅広く、哲学的および教育学的な観点を暗示する。学生にとってより良い成果に向かって進む中で学習方法と目標を組み合わせたものだ。
ブレンディッドラーニングは、学習方法の一つにすぎない。なぜなら、学力の異なる多くの生徒を担当する教師にとってオンライン学習を活用することにより個別学習を大規模に展開することがはるかに容易になるからである。個別学習の目的と理念によっては、ブレンディッドラーニングのモデルとコンテンツは大きく異なりえる。
0 件のコメント:
コメントを投稿