ブレンディッド・ラーニングの実践に不可欠なオンライン教材を評価するシリーズの第3回は、トライグループが提供する「Try IT」です。トライと言えばアルプスの少女ハイジの吹き替えCMでおなじみの人も多いと思いますが、社長は1980年代に活躍した元女優です。松田聖子と破局した郷ひろみと結婚して世間をアッと言わせ、2女をもうけながら10年で離婚した2年後にトライグループの創業者と再婚し、2005年にトライグループの社長に就任、現在に至っています。
事業安定度 ☆☆☆☆
創業の家庭教師事業に次いで個別指導塾でも全国津々浦々にネットワークを広げて、教育界では圧倒的な知名度を誇っていますが、非上場のため正確な業績等は不明です。断片的な情報から、売上高は連結ベースで300億円に達し、従業員数は1000名を超えたと推測されます。オンライン教材の Try IT は原則無料で、本業の個別指導および家庭教師のニーズを引き出す撒き餌の役割を果たしていると思われますが、オンライン学習がこれだけ一般に広まった現状を鑑みればコンテンツや機能を強化して有料課金制にする可能性はあっても、これを止める選択肢は考え難いでしょう。
コンテンツ ☆☆☆
サービス対象は中学・高校生で、カバー科目は主要5教科です(国語は高校古文漢文のみ)。各科とも専任講師による単元要点講義と基本問題解説を録画した10分前後のビデオからなり、内容的には教科書にほぼ準拠した標準的なレベルです。一度会員登録すれば、すべての学年・科目を自由に視聴できるので、理解度によって過年度に遡って復習したり、逆に先取りで学習を進めることが可能です。
ただし、要点解説ビデオはインタラクティブではないうえに本格的なドリル機能も付いていませんので、確実な理解の定着を図るには市販の問題集を別途購入する必要があるでしょう。どうしても分からない点がある場合には、スマホのチャットで質問することもできます(ただし1問500円)。
ただし、要点解説ビデオはインタラクティブではないうえに本格的なドリル機能も付いていませんので、確実な理解の定着を図るには市販の問題集を別途購入する必要があるでしょう。どうしても分からない点がある場合には、スマホのチャットで質問することもできます(ただし1問500円)。
機能・操作性 ☆☆☆☆
操作はいたってシンプルで、科目と学年を選ぶだけでパソコン、タブレット、スマホいずれのデバイスでもビデオが視聴できます。生徒が単元要点をすでに理解していると判断すれば、ビデオの速度を1.4倍にすることもできて便利です。
基本的には個人使用を前提としていますが、トライの個別教室と同様に学習計画をたてて着実に消化できるよう環境を整えれば、他の学習塾や家庭教師、さらには学校でも利用することは可能です(実際にTry ITを使って生徒指導している家庭教師がいます)。
学習管理機能 ☆☆
基本的に無料の教材ですので、高度な学習管理機能はありません。当該ビデオが視聴済みであることを通知し、単元の何%程度完了したかがわかる程度です。したがって、独自に学習計画を立て、その進捗状況を生徒自身または第三者が管理できないと、効果は半減します。
実際、個別教室で月4回9,800円の「My トライコース」へ通うとTry IT と演習プリントで学習を進めていくのですが、生徒一人ひとりに個別カリキュラムが作成され、講師が進捗状況を確認しながらサポートしてくれます。
料金設定 ☆☆☆☆☆
原則無料です。ただし、スマホのチャットで分からない点を質問すると有料です(1問500円)。またトライの個別教室に通えば、当然ですが通常の学習塾と同程度の費用がかかります。
セールスポイント
何と言っても簡単に会員登録でき、教科書レベルの内容を専任講師が解説するビデオを無料で見られることが最大の売りです。自律学習できる生徒であれば、Try IT を使って反転授業のような形で学校の予習もできます。
今後の課題
要点解説の伝達方法は人によって好き嫌いがありますから現在の講義録画方式でも構わないと思いますが、有料化してでも演習機能を充実させて Try IT を一般の学習塾や学校でも利用できるようにすれば、新たな市場が開けるでしょう。
また、教育業界における知名度は非常に高いのですが、その一方でよく指摘されるのが本部スタッフのレベルです。具体的には記載しませんが、私自身も疑問を感じた経験が何度かあります。また個別指導教室の講師も大学生が多く、長期的な観点からブランドの棄損を避けるためにも社員教育にもっと注力するよう期待します。
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