2018年1月16日火曜日

オンライン教材評価④「スタディサプリ」

ブレンディッドラーニングに不可欠なオンライン教材を評価するシリーズの第4回は、リクルートが運営する「スタディサプリ」です。2012年にリクルート本体が持株会社となり事業領域ごとに子会社を新設し、スタディサプリは販促メディア事業ライフイベント領域を担当する「リクルートマーケティングパートナーズ」の傘下にあります。同じ事業領域には、結婚情報の「ゼクシィ」や中古車情報の「カーセンサー」も含まれています。

事業安定度 ☆☆☆☆
2012年にオンライン配信が始まった高校生向けの「受験サプリ」と、2015年に小中学生向けに開始された「勉強サプリ」が、2016年に「スタディサプリ」として一つのプラットフォームに統合されました。
有料会員数は2018年には33万人を突破していますので、単純計算すると事業年商は40億円程度と推計されます。高校生向けビデオが圧倒的な数量を占めることから高校生会員が大半であると想像できますが、リクルートらしく社会人会員も相当数いるでしょう。また、全国1,000の高校でも導入されており、さらに20を超える自治体と連携して小中学校での実証実験も始まっているそうです。もともと大学受験情報サービスで全国の高校とのネットワークを持っているとはいえ、1000校をカバーするには地域ごとに分かれた数十人規模の営業部隊がいると思われます。
リクルートは、2014年に米MOOCのUdacityと提携してコンテンツの日本語字幕を提供したり、2015年には世界9ヶ国で事業展開するオンライン学習プラットフォームのQuipperを48億円で買収するなど、教育ICT事業に積極的に投資をする姿勢を明確に示していますので、スタディサプリ事業は今後拡大こそすれ縮小または撤退ということは考え難いでしょう。


コンテンツ ☆☆☆☆
サービス対象は小学4年から高校3年で、主要5科目がカバーされています。専任講師による授業を録画した15分前後のビデオとマーク選択の簡単な確認問題で一つの講義が構成されます。ビデオは小中高合わせて1万本あり、要点の解説というよりは演習問題の解説が中心となっています。
講義内容が印刷されたテキストも1冊1,200円で購入可能です。ドリルもダウンロードできますが、分量が十分とは言えないため市販の問題集を購入することをお勧めします。
小学生コースは基礎レベルと応用レベルに分かれていて、講義ビデオは4科目で計300本ずつ提供されています。中学生コースは基礎(ビデオ数5科で900本)応用レベル(同3科で250本)にくわえて定期テスト対策(4科367本)や高校受験対策コースまでカバーされています。全部で1万本あるビデオ講義の7割以上は高校生向けです。ベーシック、スタンダード、ハイ、トップの4レベルに分かれたコースのほか、センター試験対策や志望校別受験対策まで用意されています。
いずれの学年もビデオは一方通行の講義形式ですので、学習効果を高めるにはモチベーションや集中力の維持が絶対条件です。


機能・操作性 ☆☆☆
パソコン、タブレット、スマホのいずれでも視聴可能でデバイスを限定しません。自分の理解度に合わせて再生速度を1.4倍、2.0倍と加速できます。
演習問題はマーク選択式ですが、これがタッチペン入力になれば、学習効果はさらに向上するでしょう。
問題に取り組んでどうしても理解できない場合の支援機能(メール、チャット、電話など)を月額980円のサービスに望むことは難しいと思いますので、むしろ学習塾や家庭教師がスタディサプリを指導教材として使うシーンを想定する方が現実的かもしれません。


学習管理機能 ☆☆☆
高校1,2年生には、大学受験までの長期計画に基づいて担当コーチが志望校合格までをサポートする「合格特訓プラン」が月額9,800円でオプション提供されています。このサービスを利用すれば24時間メールで質問可能です。
スタディサプリを導入している高校では、年に2回「到達度テスト」を実施し、そこで判明した苦手分野について当該講義のビデオで復習(課外)するよう指導しています。しかし、教材がオンラインであることのメリットを最大限活かすには、理解度チェックを単元ごとに実施し、その結果を生徒へ即時にフィードバックして、まだ記憶が鮮明なうちに苦手を克服させることが肝要です。
個人的には、小学生のうちから「自律学習」を習慣づけるために、むしろ小中学生にコーチングサービスを提供し、高校生になればアドバイスは不要になるような制度設計とするほうが望ましいと考えます。
なお保護者は、管理画面で生徒の学習時間やドリルの正答率など学習状況を確認できます。


料金設定 ☆☆☆☆
小中高とも生徒のレベルやニーズによって選べるよう複数のコースが提供されていますが、月額980円で学年・科目にかかわらず全てのコースを自由に受講することができます。特に高校生向け講座数は圧倒的で、スタディサプリを使い倒すほど徹底的に利用すれば学校へ通わなくとも大学受験の基礎的な準備は十分可能な分量です。
学校へ導入する場合は、個人会員とは別の料金体系があるはずです。


セールスポイント
何と言っても月額980円で全学年・全科目の講義を24時間いつでも視聴できる点が最大の売りでしょう。特に、高校生向けに提供されているビデオは圧倒的な数を誇ります。これだけの分量を高1から系統的に学習すれば、センター試験レベルの基礎力を習得するには十分です。これに、月額9,800円と有料にはなりますが、「合格特訓プラン」で助言を受けながら計画的に受験勉強を進めれば、わざわざ学校へ行く必要はなくなるかもしれません。


今後の課題
講義ビデオの数量は十分ですが、演習問題の回答方式がマーク選択からタッチペン入力へ改善されて、一方通行のレクチャーに少しでもインタラクティブ機能が追加されるとベターだと思います。
また、演習問題の分量が十分とは言えないので、問題数を増やすと同時に、回答によって適当な問題が自動的に出題されるアダプティブ機能がつくと学習プラットフォームとしては両輪がそろうでしょう。
月額980円では難しいかもしれませんが、有料オプションでよいので、小中学生に対して学習計画の立案と進捗状況を確認するコーチ支援機能が提供されると、学校教育で受け身の勉強に慣らされる前に自律学習の習慣を育むことができるでしょう。

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