2018年1月25日木曜日

オンライン教材評価⑤「NHK高校講座」

ブレンディッドラーニングの導入に不可欠なオンライン教材を評価するシリーズの第5回は、これまでの民間企業から少し趣向を変えて、一般にも広く知られているNHKの「高校講座」についてレポートします。

テレビ、ラジオでの本放送は曜日・時間が年間を通して固定されていますが、すべての講座の前年度放送分がホームページ上にアーカイブされていてネットでいつでも視聴可能です。そのため、一般の高校生が学校授業の補習用にオンライン教材として使用してもまったく違和感なく学習することができます。

講師は大学または高校の教師が担当しますが、最近は生徒役に芸人や俳優など有名タレントの起用が増えてバラエティ色が強くなりました。なかにはベーシック国語の滝沢カレンや保健体育の壇蜜など洒落の利いたNHKとしては意欲的なキャスティングもあり、単調になりがちな通信教育を少しでも楽しくしようとする工夫がうかがわれます。


事業安定度 ☆☆☆☆☆
もともとは自宅で学習する高校生に向けて1953年からラジオで、1960年にはテレビでも放送され始めたもので、半世紀以上の歴史があります。ネット配信は2008年に開始されました。
通信制のNHK学園高校の授業として使用されていますし、教育番組の提供は公共放送であるNHKの使命のひとつですので、自宅学習のニーズがあるかぎり廃止される可能性は極めて低いでしょう。
蛇足ながら、ネットをメインにして職業体験などキャリア教育にも注力しているのが角川とドワンゴが運営する通信制のN高校ですが、そのN高校とコンテンツだけなら遜色ない教材を無料で利用できるNHK高校講座は超お買い得だと断言できます。


コンテンツ ☆☆☆☆
通信制のNHK学園高校の生徒が授業として視聴するNHKの高校講座は、テレビ(月~金午後2時~3時)とラジオ(月~土午後7時半~8時半)で主要5科に実技科目と情報・商業を含む11科目29講座を1年間視聴することで高校教育課程の基礎を学ぶことができるよう構成されています。
各講座は週1回20分で年間40回放送が基本で(夏休み期間は休止)、国語や数Ⅱ、コミュニケーション英語Ⅱなどは週2回全84回の放送です。テレビ・ラジオともにすべての講座は、前年度番組を各講座のホームページからネットで視聴できます。
授業内容は2~3年ごとに改訂され、各講座が準拠している教科書を公開していますので、当該教科書をテキストとして利用可能です。また、各講座のホームページにある「学習メモ」をダウンロードして番組内容を事前に予習することもできます。
ホームページには各回のポイントを確認する簡単な選択問題もありますが、確実な理解と習得を期すには市販の問題集を購入して取り組むことをお勧めします。
高校生ですので各回20分間集中して視聴することは特に問題ないと思いますが、これを40回(なかには84回)続けるモチベーションを維持し、計画的かつ自律的に学習を進める強い意志をもつことが必要です。将来のキャリアを見据えた学習メンターの支援を得ることができれば理想的でしょう。


機能・操作性 ☆☆☆
ネット版はパソコン、タブレット、スマホのいずれでも視聴可能でデバイスを限定しませんが、各自の理解度に合わせて再生速度を変更できると便利でしょう。
各回の確認問題は非常に簡潔なので、分量を増やすか、または有料でよいので問題集を別途提供してくれると、学習効果はさらに向上するでしょう。
どうしても理解できない事項がある場合に、NHK学園高校のスクーリングに相当するようなメンター機能があれば理想的ですが、これは独自に家庭教師を雇うことが現実的な方法かもしれません。


学習管理機能 ☆
通信制のNHK学園高校の生徒にはスクーリングが課せられますので、高校講座として独自のが学習管理機能は持っていません。
例えば不登校の生徒など、一般の高校生がNHK高校講座を利用して独学する場合には、近い将来のキャリアを見据えた現実的かつ効率的な学習計画を立てるスキルと、強い意志を持ってそれを着実に実行するモチベーションを維持することが求められます。適切な問題集や検定試験の選定も重要な課題です。
こうしたことを考慮すると、NHK高校講座をメイン教材にして独学するのであれば、家庭教師など外部の学習メンターに支援を求めることが現実的な選択肢のひとつだと言えます。


料金設定 ☆☆☆☆☆
公共放送ですので、テレビ・ラジオでの本放送はもちろん、アーカイブのネット配信もすべて無料です。
その代わり、充実した演習問題や学習管理機能はありません。


セールスポイント
主要5科に限らず実技科目まで含め高校教育課程のほとんど全てをカバーし、有名タレントを使って面白おかしくかつ分かりやすく仕立てられた講座を、無料でいつでもネットで学習可能という点が最大の売りでしょう。基本的な学習は効率よく最低限の時間で収めて、自分の好きなことに多くの時間を使いたいという人には打ってつけの学習手段と言えます。これを利用しない手はありません。


今後の課題
スクーリングのあるNHK学園高校の教材として使われていることを考えれば、演習問題の量を増やしたり、学習管理機能を追加することを期待することは難しいのかもしれません。利用する生徒は、すべての科目を無料で学習できる教材だと割り切って、そうした機能は自前で調達することが現実的な対応です。

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