先週末、自宅の近くで「みんなの学校」の上映会があり、舞台となった大阪市立南住吉大空小学校の木村元校長先生の講演も聞くことができました。この映画で同校のインクルーシブ教育が全国に広く知られて年々転校生が増え、今では全校生徒260名のうち何らかの障害を持った児童は50名を超えるそうです。何と全体の2割が障害児でありながら、全員が普通学級へ通っているのです!
木村先生の講演は2時間近く続いたのですが、9年間の実績と確固たる信念にもとづくお話は圧倒的で、途中で飽きることはまったくありませんでした。人間には誰でも能力に凸凹があり、学校の通知表で点数化される9科目という全体から見ればごく一部のスキルが凹だからといって差別したり隔離することはおかしいのではないか、また「障害児」と言われる児童とともに生活することで「健常児」も学ぶことが多い、という指摘には強く共感しました。「全校生徒の2割が障害児で全員普通学級!」と書きましたが、恐らく大空小学校の児童には「おっちゃん、何をそんなに驚いてるねん?」と言われそうです。彼らにとってはそれが「普通」なのです。
実際、大空小学校の卒業生とその他の小学校卒業生が中学で一緒になると、前者は小学校の延長でごく自然に障害児に接するのに対し、後者はあからさまな拒絶反応を示すそうです。木村先生は、義務教育段階で障害者児童は特別支援学級に分離することが当たり前とする環境が、1年半前に相模原で起きた障害者施設殺傷事件のような恐ろしいことを引き起こす遠因となっているのではないかと危惧されていました。
現在横浜市内に拘留されている相模原事件の犯人との面会や手紙のやり取りに基づく記事がローカル新聞に掲載されていますが、「意思疎通のできない人間を安楽死させるべき」「障害者を殺すことは不幸を最大限まで抑えることができる」と、ゆがんだ差別感情をいまだに持ち続け、自らの犯行を正当化する主張を繰り返しているそうです。
障害者雇用促進法で定められた法定雇用率(民間企業で2%)がまだ充足されないまま、今年4月から2.2%へ引き上げられます。法律で縛らなくとも差別のない社会を実現するには、障害児を育てている保護者の方や障害児教育施設で指導している先生方には言い尽くせないほど多くのご苦労があることは十分承知していますが、初等教育段階における特別支援教育の位置付けについて考え直す時期に来ているのかもしれません。
下の記事「欧米の近年 支援教育事情」は私が2年前に教育新聞に寄稿したものですが、イタリアでは25年以上前から特別支援学校そのもののが法律で禁じられているそうです。
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