2020年4月23日木曜日

コロナ禍をチャンスに変える

新型コロナウィルスの拡散により社会のあらゆる面で「遠隔化」が急速に拡がっている。教育も例外ではないはずだ。日本では、学校授業のオンライン移行はこれまで掛け声ばかりで遅々として進んでこなかった。


今までは、数年後に気付いたときには欧米のみならずアジアのシンガポールや香港など教育先進国から日本は遠く取り残され、手遅れになっているかもしれないと悲観的であった。

ところが今般、コロナウィルスという思いもかけない黒船を前にして、半ば強制的にどの学校も何らかの「遠隔対応」をせざるを得ない事態に追い込まれている。実際、試行錯誤を重ねながらオンラインで授業を発信し始めた地域や学校もある。

しかし日経新聞の報道によると、休校中の公立校でオンライン授業を実施している自治体は全国の5%しかないそうだ。文科省も端末配備を急ぐ方針は打ち出したが、教室での一斉授業を優先する姿勢は変えていない。文科省の担当者は「オンライン授業だけでは単位として原則認められない」という。

こうした日本の教育の後進性は、教育の専門家でなくとも海外では目につくのだろう。メジャーリーグのダルビッシュ投手も疑問を投げかけている。

ダルビッシュ「なんでなんやろ?」 休校中の日本の教育環境に疑問


はっきり言おう。この度のピンチをラストチャンスと捉え、学校教育制度を抜本的に構造改革できなければ、日本の教育は完全にオワコンだ。パソコンやソフトの選定、ネット環境の整備などテクニカルな話題も不要とは言わないが、より本質的な課題は従来の集団一斉授業をそのままデジタル化するのではない、教育モデルのパラダイムシフトだ。

教育面でこれ以上海外に後れを取らないためには、ICTを有効活用することで、皆が同じ教科書を使って同じ内容を同じ時間に同じ場所で取り組む「集団一斉授業」から生徒一人ひとりの能力や興味関心に合わせる「個別カリキュラム」へ移行し、かつ「先生が教壇から一方的に講義をする」受動的勉強から「生徒自身が主体となって何をどのように学ぶのかを考える」自律的学習へ転換することが不可欠なのである。

教科書の内容を勉強するだけならばNHKのコンテンツなど無料で入手できる良質なオンライン教材がすでに複数ある。優秀な先生方にはあらためて授業を録画するという二度手間はできるだけ避け、既存のリソースを有効活用して浮いた時間をICTでは対応不可能な仕事に振り向けていただきたい。生徒一人ひとりの取り組み状況を個別に把握し、それぞれの進捗状況に応じてきめ細かく対応する。特に、基本的な内容でつまづいている生徒に対し多くの時間を割いていただきたい。

逆に、自律的に学習できる生徒は、教科書を勉強するだけならオンライン教材でも十分なことに気付いたかもしれない。そういう意味では、教科書を勉強する以外の点で何か付加価値がないとわざわざ学校へ通う意味がないことになる。

また、授業をオンライン化するしないにかかわらず、そもそも先生が45分間ずっと話し続ける必要はないということに気付いていただきたい。先生が話をしている間は、生徒の頭は受動的なインプットモードになっていて能動的なアウトプットはできない。先生が講義に熱を入れれば入れるほど、生徒の頭は受動態にならざるを得ない。

生徒の自律的な学習を促すには、先生の話は全体の1~2割程度に抑えることが理想的だ。45分授業でいえば、せいぜい10分だ。したがって、1回のビデオは長くても10分、できれば5分以内に抑えることが鍵だ。ポイントは、ビデオ教材を生徒の都合に合わせて見てもらうことだ。生徒の都合というのは、ビデオを見る場所や時間もそうだが、それ以上に生徒一人ひとりが自分の理解度に応じて主体的にビデオの速度を調整したりすることだ。そうすることで能動的な行動が生まれ、理解度も格段に向上するはずだ。

アメリカでは10年ほど前からブレンディッドラーニングと呼ばれるオンライン学習が急速に拡大している。日本でも大いに参考になるはずだ。詳しくは、YouTubeビデオの解説または拙著「ブレンディッドラーニングの衝撃」を参照していただければ幸いである。

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