2019年4月3日水曜日

Edtechでは代替できない教師の仕事

"The 3 Things Edtech Can't Do"

現代社会では、教師や学生は常にコンピュータを持ち運び、ネット空間ではあらゆる情報が飛び交い、アプリは日常生活のすべてを便利にし、人工知能は新たな可能性を切り開いている
こうしたテクノロジーは将来の学校教育にも大きな影響を与えるだろう。 しかし、いくら学校や教室にテクノロジーを入れようとも、コンピュータが今すぐ教師に取って代わることはない。その理由を以3つの事例で説明したい。

1)機械では高次元のフィードバックはできない
学生の基本的知識とスキルの習熟度を即時かつ自動的にフィードバックするソフトは存在する。ワープロはスペルミスや文法エラーを訂正し、段落の始めにトピック文を配置しているかどうか、エッセイの主題を証明する証拠が含まれているかなど文章の構造やスタイルについて提案するソフトもある。しかし、作文で使われている修辞や論理が意図した読み手の心に響くかどうかをソフトで判断することはできない。コミュニケーションのより微妙な点について分析するには人間の介在が必要だ。また、科学的プロジェクトの研究対象に価値があるかやその調査範囲は合理的かどうかなども、ソフトでは判定できない。さらに、チームで効果的に作業したり、対人関係の問題を克服したり、個人的な目標を設定して課題を克服するなどのソフトスキルをソフトで提供することは不可能だ。要するに、機械に対抗するために必要となるスキルは、機械から学ぶことはできないのだ。

2)機械では個人的な背景は理解できない
ソフトを使えば、住所や人種民族、収入、出欠席、テスト結果、学習上の課題、ブラウザ履歴、さらにはキー入力やマウスクリックなど、学生に関する多くのデータを収集することが可能だ。しかし、そうしたデータから学生の真の姿を知ることができるだろうか。例えば、何かのプロジェクトで特定のクラスメートと同じグループに割り当てられたときの学生の心境をコンピューターは理解できるだろうか。また、いま読んでいる小説が以前住んでいた町での親友を思い出させるなどと推測できるだろうか。ソフトを使って収集したデータから判明したパターンに基づいて多くの有益なことを推測することは可能だ。しかし、学習体験の重要な要素すべてに関するデータを収集することはできないし、子供時代・思春期の複雑な心理状態をモデル化することも不可能である。相手を本当に知り尽くすことは人間対人間の接触からのみ可能だ。

3)機械では人間関係を再現することはできない
純粋な知的好奇心が学習の動機となるばかりでなく、人間関係が動機となることも多い。例えば、両親が成績を気にするので放課後残って補習を受けるとか、自分を心配してくれる先生の担当科目を好きになるとかいったケースだ。自分の大事な人から褒められたい、認められたいという心情が学習の動機となるケースは多い。しかし、ソフトではどんなに頑張ってもそうした本物の感情を再現することは不可能だ。

上記3例から明らかなように、ソフトや機械が教職に取って代わるなどと心配する必要はない。こうしたSFレベルの人工知能が実用化されるのは遠い将来のことで、今すぐに教師が機械に代替される可能性は低い。技術的に最も進んだ学習環境下においてさえ、教師が学習に及ぼす影響が最も大きい。教師の代替を目的とするEdtechは、教育の質を下げる結果を招く。

しかしながら、確かにソフトでは実現できないことが多い一方で、それらを教師が実行できるかといえば疑問だ。ただし教師にとって問題なのは能力ではなく時間だ。英語の教師が生徒の作文の文法や構文を添削することにかなりの時間を費やしているなかで、どこまで修辞について個人的に生徒を指導できるのだろうか。生徒と1対1で定期的に面談して近況を確認する時間を取れる先生がどれだけいるのか。ましてや、すべての課外活動に参加したり生徒の家庭を訪問したりすることなど可能なのか。学生のことを心に留めることは時間的に制約されないが、それを実行に移すには時間が必要だ。残念ながら、教師の日常は授業の計画やテストの作成、コピー取り、教材の選定、職員会議、テストの採点などに忙殺され、付加価値の高い活動に時間をかける余裕はほとんどないのが現実だ。

これこそが教師にとってEdtechが非常に重要な理由だ。ますます複雑化する世界で成功するには、生徒のスキルを高次元で開発し、個々の状況に合わせて学習を個別化し、かつ生徒と強い人間関係を築くためにより多くの時間を費やす必要がある。そうした時間を作る鍵となるのが、テクノロジーを使って付加価値の低い作業から教師を解放することだ。要するに、機械ではできない教育を実践するには、教職の一部を自動化するテクノロジーが必要なのである。

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