アオイゼミは昨年末Z会に買収されましたが、難関大学受験対策というイメージの強いZ会とオンライン学習塾を標榜するアオイゼミとが今後どのような相乗効果を発揮させるのか、興味をもって注視していきたいと思います。
1. 事業継続性 ☆☆☆
2012年3月に株式会社葵を設立し、6月よりアオイゼミのブランドで中学生向けにライブ授業のネット配信を開始しました。同年にニコニコ生放送でライブ配信を開始すると、総受講者が50万人を突破しました。
2014年にはベンチャーキャピタルのジャフコから1億2000万円の第三者割当増資を受け入れ、高校生向けにも授業配信を始めました。2017年11月にZ会の傘下に入ることを発表し、今後の展開が注目されます。
講師の多くは予備校出身者で、現在、講師とエンジニアで合計30~40人の社員がいるものと推測されます。
2. コンテンツ ☆☆
中学は主要5科目、高校は英数に現代文+古文をカバーしており、予備校出身の講師または現役大学生による授業映像をライブでネット発信しています。
授業は中学生で毎日45分×3講座、高校生は50分+60分のクラスという時間割になっており、ほぼ学校の教科書の内容に合わせて1年間進められます。自分で計画を立てて自律的に学習を進めることが不得手な生徒には適しているかもしれませんが、これでは基本的に学校の授業を帰宅して受け直しているのと変わりません。アーカイブされている4,000本のビデオを視聴するには有料のオプションを選択する必要があります。有料でも生徒一人ひとりが各自のニーズに合わせて学習できればオンライン教材としての価値があるのですが、アーカイブビデオの一覧表がないので非常に不便で、先取り予習するにせよ遡り復習するにせよ、自分のペースで主体的に学習したい生徒にはあまり向かないでしょう。
また、オンラインの授業だけで理解を定着させることは容易ではありませんが、演習問題はほとんど付いていませんので、自身の理解レベルに合わせて市販の問題集を別途購入する必要があります。
3. 機能・操作性 ☆☆
対応デバイスは、パソコンはもちろん、タブレットとスマホでは公式アプリもあります。授業は基本的にライブですので、すでに理解している内容でも早送りできませんし、逆に理解が追いつかない場合も見直すことはできません。そういう意味では、学校で集団授業を受けているのと大差ありません。
また、理解が難しい内容については有料のプレミアムプランに個別質問機能がありますが、回答までの平均時間が3日(3時間ではありません!)と非常に遅く、これではネットを利用している意味がまったくありません。
4. 学習管理システム(LMS) ☆
直接インタビューを申し込んだのですが断られましたので詳細は不明ですが、ウェブでの説明を見る限りは学習管理システムは一切付随していないようです。
5. 料金設定 ☆☆☆
規定の時間割にしたがってライブ授業を受けるだけであれば原則無料ですが、アーカイブされているビデオ4,000本を視聴するには、ライトプラン(1日5本まで年間一括10,800円)またはプレミアムプラン(ビデオ視聴無制限、個別質問可、成績保証あり、同42,000円)に加入する必要があります。学習塾のような入会金もないようですし、一般的な学習塾の授業料と比較すれば確かに割安だと言えるでしょう。ライブ授業用のテキストは、1科目6ヶ月分で中学900円、高校1,500円で入手可能です。
6. セールスポイント
授業料だけでも毎月少なくとも2~3万円は必要な一般の集団塾に通うことと比較すれば、アオイゼミの場合、プレミアムプランに加入したとしても費用は年間一括支払いで42,000円で、これにテキストや市販の問題集を購入したとしても、全体的な経費は抑えられることは間違いありません。そういう意味では、経済的な要因から塾通いを断念していた生徒にとっては救いの神となりえるでしょう。
7. 今後の課題
高騰する学習塾の費用を抑えることができないか、という発想から事業がスタートしているため、一般的な集団塾での授業を毎晩オンラインでライブ発信するスタイルになっています。したがって、一学年の履修内容を1年間かけて学習するという点では学校と何ら変わりません。他人の言う通りに学習を進める方が楽だと考えている生徒には向いているかもしれませんが、自分のペースでどんどん先取り予習したり逆に遡ってじっくり過去の復習をしたい主体的な生徒には適していません。ネット配信の最大のメリットは、いつ、どこで、何を、どのようなペースで学習するのかについて生徒側に選択権があることであり、アオイゼミではライブ授業の時間割が決められているためそうしたメリットを享受できません。有料オプションを購入してアーカイブされているビデオを見るにしても、ビデオの一覧表はなく学習履歴を記録する機能もないため、そうした主体的な学習には決して使い勝手がよいとは言えないでしょう。
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