2019年5月3日金曜日

宿題に関する一考察

"What the Debate over Homework is Getting Wrong"

宿題の目的と恩恵についてはこれまで繰り返し議論されてきた。学業成果を上げるために必要な日課なのか、惰性で続けられているに過ぎない無意味な作業なのか、それとも学生のニーズに応じて割り当てられるべきものなのか。こうした議論では、学生によって異なる宿題のニーズを判断することと、学生自身が望む宿題の内容を理解すること、この2つの側面を混同しがちだ。


重要なのは宿題をする環境で、時間ではない

宿題に賛成にしろ反対にしろ、「勉強時間=学習成果」という前提で議論する限り正しい理解は得られない。よく使われる「学年×10分」ルールでは、年齢によって宿題の量が決められるからだ。宿題の支持者は、宿題の量とテストの得点が相関しているという研究を引用することが多いが、この主張は、宿題反対者により相関関係と因果関係を混同していると非難されている。彼らは、宿題が実際にどれだけ有用であるかによって判断されるべきだと主張している。しかし宿題反対者さえ、時間の呪縛からは逃れられていない。反対者は宿題の代わりに20分の読書時間を割り当てるべきだなどと主張するが、読書時間は目標とするものではなく、学習目標達成のための変数として考慮されるべきだ。

宿題の「真の」効果についての議論が過熱する一方だが、唯一の解答は存在しないのかもしれない。家族と過ごす充実した時間や社会の発展、人生の成功、その他の要因に宿題が影響を与えるかどうか、研究では明確な答えは明らかにされていない。普遍的な答えを提供する究極の研究を求めるのではなく、宿題の目的は普遍的ではなく状況的であるという考えで前に進む方が良いかもしれない。どのような宿題がどの生徒にどのような状況で適しているのか、さまざまな状況に基づいた調査が役に立つ。

こうした考え方をとれば、教育者は学生の状況に基づいたニーズを考慮して宿題を決めることができる。たとえば、家族と学習時間を共有しにくい傾向がある学生には、家族とともに基本を学んだり実践したりするアプローチが向いているだろう。反転教室の学生は、学校で共同作業や実社会プロジェクトを行うために、宿題の時間は教材の学習に充てるかもしれない。一方、授業を重視する学生は、自分の周りの世界を探検したり、独自の作品を作ったりして、学校で学ぶことと関連のある宿題をすることができる。

一言警告すると、個々の状況に基づくアプローチでも、内容より時間を優先させる傾向に陥る可能性がある。ある状況において、学生は学習速度を上げるために一晩あたり1時間の数学の練習が「必要だ」とするのは簡単かもしれない。そうではなく、どのような数学を学校外で実践することが学習目標の達成に最も効果的かを考えるほうが賢明だろう。

ニーズと需要の橋渡し

子供が何を必要としているのかを判断することが教育者に課された役割の一つであるとすると、宿題についても学生の状況に応じた方法をとる余地は十分にある。しかし、学生の様々な状況を理解するだけでは問題は半分解決したに過ぎない。時間に基づくアプローチより正しくても、宿題は依然として学生にとって地獄のようにしか感じられないかもしれない。学生が何を必要としているかで区別することは、彼らが実際に何を要求しているかを理解することと同じではない。

そこで宿題に関する議論を深めるために第二の方法を提案する。それは、学生が必要としているものを考慮することに加えて、学生が人生において成し遂げようとする目標を理解しようと試みることだ。人々がある特定の人生の局面において目標に向かって努力しているとき、成し遂げようとする進歩を表すのが「仕事」だ。家を建てるときに建設会社を「雇う」ように、人は人生において「仕事」が発生すると、「雇う」ことができる手助けになるものを探す。言うまでもなく、宿題自体は学生生活において実行すべき仕事ではない。しかし、学生が仕事を達成するために宿題を「雇う」ことはできるだろうか。すべての学生に共通する二つの「仕事」は、成功を感じることと友達と楽しい時間を過ごすことだ。宿題を廃止した学校では、放課後の課外活動で成功を感じたり、友達と付き合うことで、学生がそうした仕事を達成することをサポートできる。逆に、宿題に重点をおく学校では、学生のそうした仕事を達成することを宿題自体がサポートする方法を見出すかもしれない。

学校で学習者中心の学習環境が広まるにつれ、宿題はより多く議論されるべきだ。そして議論の大枠では、学習時間は変数であり定数ではないこと、宿題の必要性を判断するには一つの最善策より多くの状況があることを認識することが必要だ。そして、学校は宿題を学生の経験を形成するものの一部であると認識し、彼らが学生生活の中で成し遂げようとしていることを考慮するべきだ。そうすれば、宿題は個々の学生の学習ニーズを効果的に満たし、実際に学生がより積極的に取り組むようになる可能性が大きくなる。

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