2017年12月18日月曜日

オンライン教材評価①「すららネット」

ブレンディッド・ラーニングを学校や塾へ導入する際に不可欠なオンライン教材ですが、その選定はこれまで主に経験と勘に頼っていました。しかし「ブレンディッドラーニングの衝撃」を上程してからコンサルティングの件数が増えてきたため、今後は客観的な基準でアドバイスすることが必要と考え、コンテンツを提供している各社へ順次お話を聞いていく予定です。


初回は12月18日に東証マザーズへ上場した「すららネット」で、湯野川孝彦代表に直接お話をお聞きすることができました。神田のこじんまりとしたビルの5階にある本社では、湯野川代表以下、営業や開発部隊など30人ほどの社員が勤務されていました。訪問日にはたまたま毎月1回3日連続で開催される学習塾開業者向けの研修会が実施されており、4名参加していました。


湯野川代表は、フランチャイズビジネスの支援事業で一世を風靡したベンチャー・リンク社で常務を務められました。同社は2012年に経営破綻しましたが、2010年にベンチャーファンドの支援も得ながらご自身が立ち上げたオンライン教材事業のすららネットを買収(MBO)して独立されています。


事業安定度 ☆☆☆☆
ベンチャー・リンク社から分離独立したのは2010年ですが、事業そのものは2007年に開始していますので、10年で東証マザーズへの上場を果たしたことになります。会員数は年々伸びて現在約5万人、それに伴い売上も順調に増え、2019年度は7億円前後に達すると見込まれます。ベネッセ、NTTドコモ、マイナビ、凸版印刷から出資を受け入れて自己資本比率は7割を超え、銀行借入もほぼ返済しました。会員数の2/3が私立中高を中心とした学校(現在125校)、1/3が学習塾(同550教室)ですが、売上比率は学習塾2:学校1と逆転します。個人会員は全体の1%程度に過ぎません。上場により財務の安定性とともに社会的信用も増すことから、今後更なる法人会員の増加が期待できます。


コンテンツ ☆☆☆
サービス対象は小学1年から高校3年、カバーしている科目は国数英です。教科書に準拠した標準的なレベルです。理社の提供は今後の課題でしょう。プロの声優を使ったキャラクターとの対話で学習が進み、解説とドリルで1単元は20~30分で完了します。穴埋め式の要点まとめノートも用意されています。ドリルでは、生徒が回答を間違えた場合にはヒントが出て、生徒が自ら正解を導き出すよう工夫されています。また回答内容によりアダプティブに対応して次の質問が出されます。学習は無学年で進めることが可能ですので当初のレベル設定が重要ですが、付属の学力診断テストを使って生徒ごとに適当な学力レベルを設定して開始できます。


機能・操作性 ☆☆☆
使用可能なデバイスはパソコンとタブレットです。スマホにも対応すれば個人会員のさらなる増加が見込まれるでしょう。生徒の理解ペースに応じて動画速度を変更できる機能の追加と、一部に限られている手書きの回答入力機能を強化(またはタッチペン読取り機能を追加)すること、が期待されます。


学習管理機能 ☆☆☆☆
学校や塾の先生は、手元のデータ画面を見てつまずいている生徒に即時指導できるようになっています。学習塾では保護者に毎回コメントをメールするよう指導しているそうです。また、ネットから直接入会した個人会員は、地域の学習塾との提携により「すららコーチ」と相談しながら中長期的な目標を設定します。毎日の学習進捗状況は、先生、保護者それぞれ専用の画面で確認できるようになっています。

料金設定 ☆☆☆
学校や学習塾は、1拠点(学校または教室)当たり毎月3~8万円の固定費用と生徒一人当たり1,000~1,500円の費用がかかります。個人で入会する場合には、入会金10,000円、月謝が8,000円~となっています。数百名の生徒が使用する学校には、比較的良心的な料金体系と言えるでしょう。


セールスポイント
2012年に日本e-Learning大賞 文部科学大臣賞を受賞しました。今般の上場により、教育業界のみならず社会的な信用も増すでしょう。
低学力生徒に対してアダプティブに対応する機能に優れ、特に今年発売した発達障害、学習障害の生徒に向けて視聴覚対応を強化したコンテンツが人気を呼んでいます。
2015年にスリランカで低所得者層向けの学習センターを開設したのに続き、インドネシアやインドでは私立学校へ導入するなど、アジアでの展開にも取り組んでいます。

今後の課題
理科は栄光と共同で教材の開発を進めており、また社会についても東京書籍を傘下に持つ凸版印刷と共同で教材開発を進めています。
海外展開は、現在は東南アジア、南アジアが中心ですが、将来的には中東、アフリカ市場も視野に入れています。

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