2017年11月16日木曜日

New Research Answers Whether Technology Is Good Or Bad For Learning

教育にテクノロジーを導入することは是か非か

元記事 Nov 14, 2017 Forbes

長く論争されてきたトピックであるが、結局のところ答えは目的次第ということ。従来の集団一斉授業にいくらICTを持ち込んでも猫に小判で、やはりテクノロジーは学習モデル、教育制度の構造的・抜本的転換に使われてこそ意義がある。


<記事抄訳>
テクノロジーは学習を促進するか阻害するか、教育者や学者は長年議論してきました。
例えば、Education Next の最新号でスーザン・ペイン・カーター、カイル・グリーンバーグ、マイケル・S.ウォーカーが発表した調査によれば、教室でのいかなるコンピュータの使用も期末試験における学生の平均点を標準偏差から約0.2ポイント低下させたとのことです。また、この他にもテクノロジーが教室に導入されると、同じように残念な成績を示す研究もあります。
その一方で、イサカの調査や米国教育省2010年のメタ分析など、テクノロジーの使用について素晴らしい成果を指摘する研究もあります。
一体どちらが正しいのでしょうか? 2008年以来、私は都合よくこの議論の賛否両論ともに正しいのだと主張してきました。2008年に「Disrupting Class」で書いたように、その時点でコンピュータが導入されてすでに20年ほど経っていたのです。10年前でさえ、すでに米国内で初等中等教育に600億ドル以上もテクノロジーに投資されながら、ほとんど効果がありませんでした。
その理由は非常に単純で、既存の学習モデルにコンピュータを詰め込んだだめ、思わしくない、または負の結果をもたらしたのです。大学の例をとっても、私がハーバード・ビジネス・スクールの学生だった時にラップトップの使用が許可されましたが、学期末の数日間ケーススタディの議論に使った生徒はごくわずかで、オンラインチャットで夜遊びの計画を立てていました。これでは私とてラップトップを禁止するでしょう。
しかしながら、ブレンディッドラーニングのように学習モデルを抜本的に再設計して意図的にテクノロジーのメリットを導入する場合、非常に違った結果になります。個人的な例をあげれば、将来私の娘たちが通う学校の学区ではテクノロジーを使って学習環境を包括的に再設計し、学びを個別化することを強く希望しています。我々破壊的イノベーションの共鳴者がよく言うように、肝心なのは常にモデルであって、テクノロジー自体ではないのです。
このことは、教室におけるコンピュータのみならず、黒板についても言えることです。
ハーバード大学のドックターマン教授によれば、黒板は19世紀初頭に発明されました。その技術は、講義モデルの高等教育機関で一度にすべての学生に情報を伝える手段としてすぐに広く採用されました。北米で最初に使用された記録は1801年のアメリカ陸軍士官学校で(皮肉にも、前述のカーター、グリーンバーグ、ウォーカーの調査と同じ場所)、その後黒板は急速に普及しました。
大学での黒板導入の成功を見て、普通学校も競って導入し始めましたが、授業と学習の方法はほとんど変わりませんでした。教師が黒板の使い方をよく理解できずにいたので、黒板はほとんど使用されませんでした。なぜでしょうか? 当時は、公立学校の一般的なモデルは教室が一つの校舎で、すべての学生が年齢や学力に関係なく同じ部屋で一人の教師に指導されていたのです。今日の学校のように、生徒全員に同じ内容を、同じ方法で、かつ同じペースで教えるのではなく、教師は教室を巡回して少数の生徒に個別に指導していたのです。こうした一教室の学校では教師が教壇に立って授業をすることは滅多になかったため、黒板はあまり意味がありませんでした。
公教育制度が今日の「工場モデル」に変更された1900年代初頭まで、黒板がアメリカの教育の定番になることはありませんでした。ここから教えられることは、モデルが重要だということです。
今日の世界でも、同じような傾向を見ることができます。最新の研究がこのことを指摘し、テクノロジーの効果を良くても目障りなものと批判する人々とテクノロジーの効果は絶大だと主張する人々との間の混迷をおそらく一掃してくれるでしょう。
J-PAL-MITの貧困アクション研究所は、教育テクノロジーの4つの主要分野、すなわち技術へのアクセス、教育におけるコンピュータ支援学習、技術ベースの学習指導、およびオンライン学習について、100以上の実験的研究を調査し結果を発表しました。
その報告によれば、
  • 教育用ソフトが学生に特定のスキルを訓練するコンピュータ支援学習は、特に数学で有望。これはおそらく、学生の学力レベルに適合し、かつ学生がマイペースで学習できるように個別化する能力と、教師に生徒の学習状況を即座にフィードバックする能力をソフトが提供していることが大きい。この点はもちろん、学習を個別化するブレンディッドラーニングを信奉する人々にとっては驚くような指摘ではない。
  • 学生にあるコースへの登録を促すようなテクノロジーによる学習指導は、一貫して良い学習成果を生む。
  • クラス全員にコンピュータを提供することは、学習成果の向上には直結しない。これは、ただテクノロジーを詰め込むだけの危険性に関する我々の研究からも容易に予測可能。繰り返すが、まず最初に学習モデルを優先すべきであり、その次に学習モデルをサポートするテクノロジーを考えるべき。テクノロジーありきの取り組みは、経験上もほとんど失敗に終わる。
  • オンライン学習の研究はまだ浅いが、「ブレンド型」コースは対面型コースと同様の成果を生み出し、コスト削減の可能性も高いようだ。対面型授業はフルオンラインの授業よりも好成果を生む。これが、フルオンラインのコースが未消費分野、すなわち他に全く何も代替手段がなく対面型コースと競合しない領域、にまだ特化すべき理由である。
私の見解では、これが予期する答えです。なぜならテクノロジーによる学習の個別化に大きな可能性を見出す(ただしここ言う成果は学習設計の良しあし次第であることに注意)と同時に、従来のアナログ学習モデルにテクノロジーを詰め込むだけの危険性を指摘しているからです。
本稿が研究者たちの注意を引き、テクノロジーと学習の関係についての理解を深めることになるでしょうか。そう願います。もうそろそろ、誰の得にもならないような学習におけるテクノロジーの是非についての無意味な議論と単純な調査を終える時期でしょう。

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